
一:北前船
黄金の航路が、橋立を建てた。
江戸後期から明治にかけ、日本海を縦断する西廻り航路が日本の物流を支えました。蝦夷地(北海道)で昆布やニシンを仕入れ、上方で綿や酒を買い付け、各寄港地で売り買いを繰り返す「買積み」の商法は、一航海で数倍の利益を生みました。それが北前船です。
加賀橋立には最盛期、20 軒を超える船主が軒を連ねました。海で積み上げた富は石垣となり、赤瓦の屋敷となり、橋立は「日本一の富豪村」と呼ばれました。北前船が各地から持ち帰った昆布だし、麹、糠漬けは、今も北陸の食卓の基層として残っています。
明治後期、汽船の普及とともに北前船の時代は静かに幕を下ろしました。しかし船主たちが遺した石垣と赤瓦の町並みは、住民の暮らしの中で守られ続け、国の重要伝統的建造物群保存地区、そして日本遺産へと選定されました。橋立の栄華は、かたちを変えながらいまも生きています。
航海の無事を願って奉納された、北前船の船絵図。


















